JR和歌山線では、2023年春より橋本~和歌山駅間でJRTC-W(Japan radio train control system - west、無線式ATC)の導入が計画されています。このJRTC-WはJR東日本のATACSがベースとなり、安全性の向上、地上保安設備の簡素化などを目的としているが、従来のATS-SWとJRTC-Wの混在を可能にするなどJR西日本独自機能が追加される見込みです。
和歌山線とATACSが導入されている埼京線・仙石線の大きな違いは列車の分割併合があること、ATSとATCの混在運転を可能にすることです。
また、JR西日本が取り組む列車の自動運転化についても、必要な技術として無線式ATCが挙げられており、和歌山線の導入・検証を経て他線区でも導入の可能性があります。
JRTC-Wについては、吹田試運転線や嵯峨野線亀岡~園部間でU@techを使用して各種試験が行われたほか、報道機関にも試験内容を公開していた。
和歌山線では、2021年現在、既に車両は227系に統一されているが、計画では、2023年春に一部列車に対してJRTC-Wを導入しATS-SWと併用運用、2024年春に全列車に対して導入しJRTC-Wへの移行予定となっている。
→2022年2月18日にJR西日本より「無線による保安システム導入計画の見直しについて」と題されたプレスリリースがあり、「近年の無線通信技術の目覚ましい進歩とこれまでの開発成果を踏まえ、現行の計画を見直し、新しい技術を取り入れた無線による保安システムの導入を将来的に目指すこととしました。」とのことです。
以下のように既に地上設備・車上設備で無線式ATCの導入準備が進んでいますが、コロナ禍における経営悪化を受け、導入コスト削減を念頭とした見直しが迫られたものと思われます。新しい技術を取り入れた無線による保安システムの導入を将来的に目指していることから、既に整備し始めている設備を生かしつつ、小海線のATS-P(R)のようなものに落ち着くのではないかと見ています。
2021年7月時点で地上設備・車上設備の導入に向けた準備が既に始まっているため、一旦記事にします。
布施屋駅に設けられたJRTC-W用の無線設備。2021年3月の時点でほぼ完成していたようです。なお7月に現地を訪れた際には電波は出ていませんでした。
基地局アンテナは埼京線(首都圏)と同じく2対となっています。送信ダイバーシチ及び適応等化による対策のためと思われます。
粉河駅にて。
橋本駅には位置補正地上子用と思われる地上子の設置準備が行われていました。
※参考:ATACS用位置補正地上子
車両側も準備工事が進んでいます。
クモハ226(M'c)にはメーカー出場時よりJRTC-W用のアンテナ台座が取り付けられています。また運転室内の車掌台側にもATC用機器の準備工事がされています。
一部の車両では車上設備の搭載が進んでいます。車掌台側にもATC用機器は「ATC機能停止」「ATC非常運転/パターン低減」のスイッチボックスと思われます。
運転台はまだ変更がありません。
運用が始まったらまた確認しに行きたいと思います。