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無線式列車制御特集
 

地方路線向け無線式列車制御システム2

~GNSSと公衆無線網を活用した列車制御システム~

地方路線向け無線式列車制御システムについて

 ATACSとは、JR東日本が開発した無線式列車制御システムで、これまで軌道回路による列車検知から車上装置により位置把握とし、各列車より無線によって収集された位置情報などを基に地上装置より各列車に信号情報を送信する、双方向の信号制御システムである。
 一方で、無線式列車制御システムを導入するにあたり、設備投資費用(特に自前での無線網・基地局の整備)が課題となっている。また地方路線のように数時間に一本程度の列車本数ではフル整備をすることはオーバースペックとなってしまう。

 そこで、JR東日本では2種類の地方路線向け無線式列車制御システムの開発を進めている。1つめは、小海線で導入されたATS-P(R)と呼ばれている自前で基地局を整備しつつ無線エリアを交換のある駅周辺に限定するもの、2つめが八高線で試験が行われている公衆無線網とGNSS(Global Navigation Satellite System - 全球測位衛星システム)を活用した無線式列車制御システムである。このページは後者を取り上げる。

 公衆無線網とGNSSを活用した無線式列車制御システムは、これまで軌道回路によって把握していた列車位置の把握をGNSSを用いて把握し、また、信号や踏切などの制御設備と中央装置とのデータ通信も自前の通信設備(従来のケーブル通信や自社無線網等)を持たずにdocomoなどの携帯無線通信網を活用する試みである。これによって地上設備で使用されていた大量の通信回線・ケーブルが不要となりコスト削減が期待できる。

 GNSSについては既にセンチメータ級測位補強サービス「CLAS」により、制度が約10cm(移動体は24cm以下)など非常に高精度となっているほか、公衆無線網もドコモ・KDDIの2社を採用することで一方で通信障害が発生しても他方を使用することで運行への支障を低減する仕組みとなっている。

~GNSSと公衆無線網を活用した列車制御システムのざっくりとしたイメージ~

 ※トンネル区間などGNSSの受信が出来ない区間は車両の速度発電機により計算するほか、GNSSの測位誤差などの対策として位置補正地上子が一定間隔で取り付けられている。また、基地局や中央装置等の通信には携帯無線通信網を使用するため、通信遅延を考慮し、各装置の時刻同期はGNSS時刻を用いている。これはデジタル列車無線装置と似ている。

~GNSSと公衆無線網を活用した列車制御システム・地上設備~

 寄居駅に設置された設備。テプラには「東電所 無線踏切試験設備」と書かれている。無線駅制御装置用と思われ、中央装置との通信に使われるものと思われる。

 なお、通信内容は、駅→中央では、在線情報・信号の設定情報・分岐器の開通情報・出発進路設定要求など、中央→駅では、出発信号機現示出力許可等となる。

 位置補正地上子。試験用のためかピンク色をしている。

 第一下郷踏切に設置された試験装置。見慣れない3機のアンテナが付いています。

~GNSSと公衆無線網を活用した列車制御システム・地上設備車上設備~

車両に地上設備と同じアンテナが取り付けられている。 車内は覗けていないため不明。

参考

更新履歴
 2023年01月22日
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