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無線式列車制御特集
 

~ATACS~

~ATACSとは~

 ATACSとは、JR東日本が開発した無線式列車制御システムで、これまで軌道回路による列車検知から車上装置により位置把握とし、各列車より無線によって収集された位置情報などを基に地上装置より各列車に信号情報を送信する、双方向の信号制御システムである。

 これまでの列車制御の課題となっていた複雑な地上設備の簡素化及び維持コストの削減、地上子(固定点)から取得していた制御情報を無線による連続制御になることによる安全性の向上、軌道回路による固定閉塞から移動閉塞になることによる列車の時隔短縮、さらに速度情報を基にした踏切の閉鎖時間短縮など、これまでになかった保安装置となっている。

 JR東日本は1995年に開発に着手、様々な試験の後に、2011年10月10日に仙石線あおば通~東塩釜間に日本初の無線式列車制御システムとして導入した。その後、2017年11月4日に埼京線池袋~大宮間にも導入し、今後首都圏の各線区でATACSへの置き換えが予定されている。

路線名 導入時期
仙石線(あおば通~東塩釜) 2021年10月10日
 埼京線(池袋~大宮) 2017年11月4日
山手線 2028~2031年頃予定
京浜東北線(大宮~東神奈川) 2028~2031年頃予定

~(大雑把な)仕組み~

 ATACSの使用されている制御機能として、大きく二つ、列車間隔制御と踏切制御がある。

 列車間隔制御は、各列車の車上装置にて速度センサ及び位置補正地上子を基に現在の位置情報を計算し、それを地上設備へ送信する。地上設備は収集した位置情報を基に各列車の停止限界点を計算し送信する。各列車は受信した停止限界点情報を基にブレーキパターンを生成し、速度超過した場合はブレーキがかかる仕組みとなっている。

 一方、踏切制御は、車上装置が自列車から踏切までの到達時間を位置情報と速度情報を基に計算し、到達時間が踏切の動作から遮断までに必要な時間内となったときに車上装置から地上装置を介して踏切へ踏切警報(踏切遮断)要求を送信する。踏切は要求を基に警報・遮断を行い、完了した時に地上装置を介して当該列車へ遮断完了情報を送信する。車上装置は完了情報を受け取ると踏切パターン(万が一のために踏切手前で停止できるようにパターンが生成されたもの)の消去を行う。

 車上・地上間通信は400MHz帯で960msごとに行われ、3回連続で通信が失敗した場合は非常ブレーキがかかる。そのほか、合理性チェック、在線管理、通信監視などさまざまな安全対策が行われているが、割愛する。

~地上設備~

 ATACSで使用されている周波数は400MHz帯であるため、基地局側は列車無線と同様に八木アンテナとLCXが使用されている。

 なお、埼京線(首都圏)では、高層ビルなどによる電波の遮蔽及び反射による影響も考慮し、仙石線にはない送信ダイバーシチ及び適応等化による対策が取られている。そのため、基地局アンテナは2対となっている。

 ATACS位置補正地上子。

~車上装置~


仙石線205系に設置されたATACS用アンテナ。仙台方先頭車のみに取り付けられている。

運転台。右側のモニタに進路情報が表示される。

 埼京線E233系。屋上の赤丸をしたアンテナがATACS用アンテナ。運転台にした赤丸部分には車上装置のログを地上装置へ送信するためのWiMAXアンテナがある。

 WiMAXアンテナ。車上側のログデータを地上設備に送信するために使用されている。首都圏のみの採用。

 ATACS搭載車両にはIDが付与されており、各先頭車両にIDが表記されている。

 TIMS画面。D-ATCと同様の進路情報が表示されている。ピンクの「>-<」表記は踏切を表している。
 白が太いもの(下写真の500m以上先のもの)はまだ踏切が開放していることを示している。なお、踏切パターンが消去されていない場合でも、TIMSの停止限界は先行列車までを示している。もちろん車上装置ではパターンが生成されているため、運転台の▼矢印はパターン消去されない限り、踏切に近づくにつれて徐々に速度が下がってくる。

参考

更新履歴
 2021年06月06日公開
 2021年12月11日更新
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