近年、列車無線の老朽化や旧スプリアス規格の期限を迎えることから、各社局で列車無線の更新を行っているところがありますが、自前での基地局所有から、無線局免許を必要としないIP無線を利用した列車無線を採用しているところが出始めました。
IP化のメリットとしては、自前での無線局を持つ必要がないため、移動局・基地局の保守運用の必要が無くそれに伴う費用もかからない、IP無線そのものも既製品を採用できることで調達コストを抑えられる、特定のメーカーに縛られる必要がない、デジタル化により音声明瞭・秘匿性の向上にも繋がります。また、携帯型では異常時には乗務員が車外へ持ち出して通話をすることも可能となります。
また、鉄道の列車無線としては未だ採用されていませんが、Buddycomのように、タブレット端末とセットで運用した場合、音声だけで無く文字や画像データの通信も1回線で出来るようになるため、運転通告等の文字情報伝達、災害・事故の際の現場画像の送信なども併せてできるようになります。
デメリットとしては、無線端末台数分の月々の通信回線の料金がかかる(レンタルであればレンタル費用も)、携帯キャリアで通信障害・基地局停電または回線トラフィック増加による輻輳が発生した際には通話が出来なくなり列車の運行にも影響が出る、全線が契約キャリア圏内である必要がある、等でしょうか。
以下は導入している路線の一部について紹介します。
トム通信工業社の「SmartWave」を採用。鉄軌道線で全国で初めて列車無線としてIP無線を採用しました。2019年3月27日に東京都交通局からIP無線を導入したとのプレスリリースが発表されたことから、導入時期は、2019年3月頃と思われます。
車載器は「SK-3000」、指令台は「SV-1000」というモデルを使用していて、回線はドコモの3G/LTE回線のようです。
icom社製のIP無線を2020年3月下旬頃に導入しています。車載器にはIP501Mが採用されています。
なお、携帯用のIP500Hは2017年夏頃より導入されていました。津波避難対応時の携帯用のためと思われます。