JR東海は2021年09月22日に、「東海道新幹線におけるミリ波方式列車無線の整備について」と題されたプレスを発表した。現行のLCX(400MHz帯)による列車無線からミリ波(40GHz帯)に移行するというものである。
東海道新幹線では、1964年の開業時より空間波によるアナログ列車無線が採用されていたが、1989年3月にLCX方式に切り替え、2009年2月にはデジタル運用を開始した。今回2021年の発表では、今後2027年にミリ波方式を採用することで、転送容量がこれまでの最大300Mbpsから同1Gbpsとなり音声・データのみならず、映像等の大容量の通信が出来るようになるほか、地上設備についてもメンテナンスの省力化が期待されている。
なお、山梨リニア実験線でもミリ波方式列車無線システムの実験が2000年頃には既に行われており、試験結果が活かされるものと思われます。
空間波 | アナログLCX | デジタルLCX | ミリ波 | |
導入時期 | 1964年~ | 1989年~ | 2009年~ | 2027年(予定) |
周波数帯 | 400MHz帯 | 400MHz帯 | 400MHz帯 | 40GHz帯 |
通信速度 | (音声のみ) | 64Kbps | 3Mbps | 約1Gbps |
通信内容 | 音声のみ | 音声・データ | 音声・データ 車内インターネット接続 |
音声・データ 動画像転送 |
電子情報通信学会誌の「山梨リニア実験線の列車無線システム」(2002.1 通号 932)には山梨リニア実験線でのミリ波方式列車無線システムについて記載があり、前方カメラ映像や車両状況監視画像を司令室に転送する試験が行われていたようです。当時は、45GHz帯の4波を地上→車上に3波、車上→地上は1波で使用し速度は6.312Mbpsでした。
なお、上記記事が出てから既に20年が経っており、性能は向上しているものと思われます。
軌道沿いにはミリ波アンテナと思われるアンテナがありました。一方で、雑誌「WEDGE」1997年8月号内にある「超伝導リニアモーターカー<情報転送設備>次世代の列車無線にミリ波通信を導入」では、“ミリ波の地上側アンテナをガイドウェイ底部に置き、列車側アンテナを側壁の上部よりも下側において配置している”との記載があります。故に、このアンテナは別の用途で使われている可能性もあります。
山梨県立リニア見学センター付近の軌道にはLCXのようなものがありましたが、youtubeなどにあがっている前面展望動画を見るとLCXが無いところが多くあり、すでに列車無線(データ通信)にはミリ波のみが使用されているものと考えられます。用途は何でしょうか?